ベン・メアレア遺跡及び周辺遺構の調査を2010年2月下旬から2010年3月中旬にかけて行いました。
今回の重要な課題の一つはベン・メアレア寺院の測量にありました。この調査は昨年度から行われている測量の継続調査で、今回は主に第一回廊及び第二回廊の細部形状の採寸をコンベックスや曲尺を用いて行いました。今回の調査によって崩壊の激しい中央祠堂部や同じく崩壊が激しい一部の建物の基壇部を除く箇所の採寸を終えました。
次回の調査では、トータル・ステーションを用いた第一回廊及び第二回廊周辺の測量調査や崩壊の激しい箇所についてのより詳細な調査を中心に行っていく予定です。
また、ベン・メアレア周辺の遺構についての調査も行いました。
ベン・メアレア周辺には、ベン・メアレア東側に広がるバライと呼ばれる貯水池や、回廊の四方に異なるタイプの入口を持つクメール建築ではかなり特異な寺院であるPr.Chrei、ピラミッドとテラスが併設している建物群が周囲より一段高い位置に建てられているPr.Kong Pluk、一般的に『施療院』と呼ばれるタイプの寺院であるPr.Don Chan、また同じく一般的に『宿駅』と呼ばれるタイプの寺院であるPr.Kansaeng、そしてバライの中心に位置しているPr.Phyと、ベン・メアレア以外にも興味深い遺構がたくさん存在してます。
そこで今回は、雨季には調査困難であるこれら5つの遺構とベン・メアレア東側に存在するバライの精査を行いました。
この調査ではまずこれら5つの施設の正確な位置情報及び形状を得るために、GPSを用いて高精度な基準点を作成し、さらにそこからトータル・ステーションを用いて建物の各部を計測しました。また建物の細部形状はコンベックスや曲尺を用いて手作業で採寸しました。
さらに、遺構に残存するリンテルやペディメント等の各部の装飾を写真で記録しました。
バライについても、一部地形測量を行いました。
今後は今回の調査で得られたデータを用いて、EFEOによって作成された既存のベン・メアレア遺構の周辺図や周辺遺構の平面図及びインベントリーの更新を行っていく予定です。(石塚)
*本研究は日本政府文部科学省科学研究費補助金による助成研究「クメール帝国地方拠点の都市遺跡と寺院遺構に関する研究(研究代表者 溝口明則)」によるものです。
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