バイヨン寺院での海外学生インターン

バイヨン修復現場から

2月3日から3月3日までの一ヶ月間,韓国ソウルのSoongsil大学の建築学科学部生4名が,バイヨン寺院の研究を課題としてJASAプロジェクトにて研修を行いました。海外の学生に対するインターンシップとしては始めての試みでしたが,参加した学生が熱心であったこともあり,実際の修復工事に対しても有用な一定の成果があげられました。参加した学生にとっても,とても有意義な体験であったと思います。

 

参加学生は学部3年生のKim Min,Lee Sojin,Park Yurie,Kim Minwooの4名です。最初の一週間はアンコール遺跡群内の様々な寺院の見学にまわった他,バイヨン寺院内での修復工事や既往の研究について学びました。

その後は,バイヨン寺院外回廊東門を対象として,散乱石材の原位置同定のための調査を行いました。


この建物は,過去にEFEOによって修復されたことがありますが,クメール・ルージュによる内乱の時代に再び倒壊し,現在では石材が散乱したままに放置されています。参道より入った観光客が真っ先に目にする建物でとても重要な位置を占めていますが,残念ながら境内でも最も状態の悪い建物の一つです。

 

この建物を構成する石材が室内外に散乱したままとなっていますが,これらの石材の現在の位置を記録し,それぞれの石材の特徴から原位置を特定し,建物の復元考察を行おうとするのが今回の研修の課題でした。記録にあたっては,三次元計測のデータを利用するとともに,現場での簡易的な採寸なども行いました。また,計300以上の石材を個別に記録し,目録化しました。原位置の特定は必ずしも十分には行うことができませんでしたが,大型の部材についてはある程度の見当を付けることができました。

 

建物の図面化や部材の記録は,対象とした建築を理解するための最も近道ともなる作業で,外から漫然と眺めているときには気付かない様々な建築的な特徴を理解することができます。一ヶ月間という短い期間でしたが,アンコール建築についてある一定の理解が得られたことと思います。


 

大学や組織などに縛られることなく自由な意志によって参加した学生にとって,こうした日常からかけ離れた環境における異文化への接触は(といっては大袈裟ですが),その後の人生の幅を広げる体験となることでしょう。参加者からのメッセージを今後紹介したいと思います。(一)

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