プレアヴィヘア州のクメール遺跡調査後、日本からの調査員がさらに数名到着し、2010年春期の全体調査は2月26日から始まりました。調査の中心は冬季の調査に引き続きベンメアリア寺院ですが、それに並行して、3月4日から13日の計7日間にわたってコーケル遺跡群での補足調査を行いました。
今回の主な調査内容は、
a) これまでTPS、GPSなどの機材による測量及び手ばかりにより作成してきた遺跡群内各寺院の配置図の最終チェック(Pr.Thom[KK01]からPr.Boh Lohong[KK34]まで)
b) Ang Khnaに彫られた多数の露頭への彫刻の美術的調査と正確な分布地図の作成(この遺構はラハル南、広く露呈する砂岩の岩盤に直接、動物とみられる彫刻や、神々の彫刻、そのほか円や四角の幾何学模様の彫刻が彫られている非常に興味深い遺構ですが、これまでその彫刻内容の種類・意味・位置などについて詳細な調査が行われていませんでした。)
c) Pr.Thomを中心にコーケルに残された「リンテルやペディメント」その他彫刻の美術史的な観点による調査
d) コーケルでこれまで確認された多数の「台座」の採寸と確認。いくつかの台座の装飾のスケッチ
e) 「標石」と呼ばれる遺物の確認と採寸
f) 各種目録の更新
等々です。特にコーケル遺跡群の奥地は乾季でなければ踏み込めない地区が多くあるため、今回の乾季中になんとかやってしまいたいと考えていました。
調査前半 (3月4日~6日)
最初の3日間は下田、佐藤、伊藤先生(広島大)の他、学生5名(早稲田大学・同志社大学)の計8名で行いました。
1日目:午前 全員でPr.Pramの図面チェック及び図面修正の方法についてけんと宇
午後 2班に分かれて周回道路沿い南部の遺構図面チェック及び台座採寸
伊藤先生班はAng Khnaの調査を開始
2日目:午前、午後ともに前日に引き続き周回道路沿いの遺構図面チェック及び台座採寸
伊藤先生班は一日中Ang Khna調査
3日目:午前、午後ともに2チームに分かれて遺構図面チェック
調査班1:バイクを利用して地元ガイドの案内をもとにPr.Thomの裏側、
コーケル遺跡群西側の遺跡群の、図面チェック及び台座の採寸
調査班2:周回道路沿いの残りの遺構の図面チェック
伊藤先生班:Ang Khna の調査の続き
寺院遺構の再調査では、以前よりもクリーニングが進んでおり、これまでには見えていなかった石列や基壇などを確認することができるようになった箇所も少なくありませんでした。
Ang Khnaでは彫刻が比較的広い範囲に散在していますので、それらを網羅的に確認する作業は大変です。しかし、美術史家の視点は、これまでの私たちとは少し違った意味が潜んでいることを鋭く察知されたようです(島田)
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