思い返せばそれは2010年、アンコールクラウ小学校に新校舎2教室を増設したときのことでした。
生徒や村民に感想を求めたところ、「次は村に中学校をつくってほしい!」という声が多数寄せられました。
調べてみると、アンコールクラウ村を含めた5つの村には中学校がなく、卒業生は8キロ以上離れたシェムリァップ市内の中学校に通っていることが分かりました。しかも、自転車がなければ通えず、雨期には通学が困難になることも分かりました。
さらに、村の子供たちは家庭の貴重な労働力。田仕事、牛飼い、薪拾い、遺跡での物品販売、妹弟のお守などを任されるため、小学校中退者が非常に多く、中学進学率にいたっては村全体の子供数に対して1割以下という現実もみえてきました。
カンボジアの未来のためには農村地域の教育状況を改善しなければならない、と常々考えていた私たちは、さっそく中学校建設用地を探し始めました。
しかし、適切な土地は見つかりません。
そしてほどなく、自身の私有地3haを国に寄付して中学校建設を実行するかどうかという決断を迫られることになります。迷いがなかったといえば嘘になりますが、3学年で1200人以上いるはずの5つの村の子供たち全員が通える中学校を創設することが、最も有意義な土地の使い方だと判断しました。
校舎建設費の大口寄付者が現れたことも決断を後押ししました。まだまだ資金は足りませんが、こうなったら実現に向けて前進するのみ。
こうして2012年4月、中学校校舎の建設工事がはじまったのです。