車やバイクのクラクションと排気ガスに溢れた喧噪の都市「プノンペン」の中心で,唯一静けさを保っているのが,メコン川の畔に位置する王宮です。特に王宮の裏側,観光客が入ることができない国王の居住区はまさに別世界。巨木が点在し,緑豊かな敷地が広がっています。
さて,この王宮内で一際異彩を放っているのが,ナポレオン三世に寄贈されたという瀟洒な建物です。実はこの建物,老朽化が進み,各部の損傷が著しいため,3ヶ月前から高いフェンスが周囲に張られて立ち入り禁止となっています。宮内庁からの依頼で,この度建物の視察に訪れましたが,床面の不同沈下,仕上げ材の剥落,天井の崩落,各所鉄筋部の爆裂破損,ガラス窓の割れ,木部の劣化,屋根瓦の崩落など,かなりシビアな状況に至っていることが確認されました。
宮内庁では建物の保存修復工事の検討が開始されていますが,王宮内でもきわめて重要な歴史的文化財であるため、海外の技術支援も視野に入れて慎重に保存修復の検討を進めたいということです。(一)
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