12月15日に,アンコール遺跡の保全と開発のための国際調整会議(International Co-ordinating Committee for the Safeguarding and Development of the Historic Site of Angkor)がシェムリアップにて開催されました。
会議は年に二回行われていますが,12月はPleriminaly sessionで,技術的な協議よりも,より政治的な問題,そして観光都市として発展を続けるシェムリアップの開発が議題となります。日本からはシェムリアップ市の水供給事業に関するJICAからの報告と,JASAのバイヨン修復事業に関して外務省文化交流室から報告がありました。修復事業については,1994年に開始され今日に至るまでの支援の経過について報告された後,今後もアンコール遺跡の保全のための貢献を継続する方針が発表されました。
会議の途中で、タニ窯痕に新設された博物館の開館式が開かれました。
この窯痕では奈良文化財研究所と上智大学が発掘調査を行いましたが、そこで出土した陶器などの遺物を展示しています。シェムリアップの東側、チャウ・スレイ・ビボール遺跡の近くに位置し、市内からは40分ほどで 訪れることができます。
会議の前日に行われたサイトビジットでは,アプサラ機構によって進められている北バライの再活用事業の様子を現地視察すべく,北バライからプレア・カーンそしてニャック・ポアンと見学しました。アンコールトムから真北に延びているかつての土手を利用することで,北東から南西へと緩やかに勾配のあるアンコール遺跡群を流水する河川や自然流を堰き止め,これを新設した水門から北バライに引き込むという事業です。また北バライの決壊していた数カ所の土手が再構築されました。その結果,今年は記録的な大雨が降った時期があったことにもよるかもしれませんが,北バライの貯水に成功し,これを農業用水などに利用する方向性が見えてきました。
しかしながら,一方で,北バライの中央に位置するニャック・ポアンでは,溜池の水嵩があがり,景観としては美しくなりましたが,基壇の崩落が発生するなどの問題も出てきています。
今後の対策に関心が集まるところです。(一)
コメント