バイヨン寺院の本尊仏の模刻制作がいよいよ本格的に始まりました。
2月上旬より石材の粗加工を開始していましたが、本格的な制作開始にあたり、東京芸術大学より仏師の矢野健一郎先生、アシスタントの川島恵さん、そしてコーディネートに千葉真由子さんにお越しいただきました。
現場では5名の技能員が作業にあたっていますが、彼らに対して基本的な彫像の見方、そして作業の工程についての指導が進められています。
まず最初に彫像の表層をなす形状の内部に、人体の骨格や筋肉がどのように表現されているのか、解剖学的に本尊仏を観察する方法について解説されました。続いて、現存する本尊仏が既に修復されており、一部には誤った復元的表現がされていることについて説明され、今回の模刻においての基本的な復元考察の指導が加えられました。
バイヨン本尊仏の類例となる彫像として、昨年、タ・プロム寺院のダンシングホールの脇から大型の仏像が出土しているため、この彫像の見学に向かいました。この仏像は頭部はないものの、身体は残存状態がよいため、本尊仏では欠損している箇所の参考となりました。
制作の工程は、矢野先生が日本国内で準備された木造のミニチュア像を利用して説明されています。制作過程において一貫して基準となる点、線、面の取り方を明示され、その基準を水平・鉛直方向にとって加工するために、石材の位置が再調整されました。
さらに、レーザーレンジセンサーによって得られている仏像の三次元形状データから、彫像を縦横に切断した断面型枠をベニヤ板より準備しています。この型枠によって立体的に仏像の形状へと彫り進んでいくことになります。
本事業は、「朝日新聞文化財団(日本の仏像修理の技術移転事業)」と「早稲田大学仏教協会支援グループ」からの支援を受けて進められています。(一)
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