現在修復工事が進められている「バイヨン寺院南経蔵」。
この建物の修復の際に基壇を解体したところ,内部よりラテライト造の構造体が出土しました。通常,アンコール遺跡の基壇は,外側より「砂岩>ラテライト>版築土」の三層構造となっていることが知られていましたが,今回の修復工事では,この最内核部の版築土の内側からさらに構造体が検出されたのです。
この構造体は,上下面のないボックス状の遺構で,東西に長い基壇の内部に,二つ呑み込まれるようにして配置されていました。この遺構がどのような目的で内部に設置されたのかはこれまでのところ定かではありませんが,①前身遺構,②構造的補強のための構造体,の二つの可能性が大きくは推測されます。
こうした内部構造体が検出された事例はアンコール遺跡において他に類例がなく,慎重な検討を要するところです。
現在,基壇上部の土層を削り取るようにして調査を行い,この構造体の形状や組積の特徴,周囲の土質の違いや強度などの試験を進めています。
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