散乱石材を原位置へ

三次元計測によって、バイヨン寺院の散乱石材の同定調査を進めています。

 

バイヨン寺院は,合計,約42万個の砂岩ブロックによって構成されていたと試算されますが,寺院の中には約6万個の石材が現在散乱しています。つまり,約15%の石材が散乱したままとなっているわけです。

 

散乱している石材の多くは,外回廊の内側に山積みにされたもので,20世紀初頭に境内の至る所に崩落していた石材を移動したコマイユ保存官の名前をとって「コマイユの積石」と呼ばれています。

 

これらの崩落した石材の原位置を特定し,それらを実際に原位置に設置して,バイヨン寺院を当時の姿に戻そう。という究極的な目的のもとに,ある調査が始められました。

 

これまでに,東京大学池内研究室ではバイヨン寺院の三次元計測を行ってきましたが,これに加えて,散乱している石材の形状を記録し,原位置を特定しようという試みです。

 

実際には重くて簡単には移動できない各石材を,デジタルの画面上で持ち上げたりひっくり返したりして三次元のジグゾーパズルをしてみようというものです。今回はその最初の試みとして特に分かりやすそうな,バイヨンの「尊顔」の各パーツとなる散乱石材の計測を行いました。これまでに目視調査によって約60個の顔の各部位をなす石材が確認されています。今回の調査ではそれらの部材の形状記録を終えました。石材全面を記録するため,ターンテーブル上にブロックを順に載せ,様々な角度から計測ができるようにしました。近くで見ると大迫力の目や口の一部となる各石材が次々に計測されました。

 

これら一連の計測作業は東京大学博士課程の鎌倉真音さんによって行われました。また,今後のデジタル上でのパズル作業は日本帰国後に進められる予定です。

 

6万個の石材が原位置に戻される可能性を探る第一歩の成果に期待されます。(一)

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