タ・ムアン・トム寺院解禁

クメールの遺跡たち

先日のプレア・ヴィヘア訪問に引き続き、ダンレック山脈上に位置するタ・ムアン・トム寺院の現状調査を行いました。タ・ムアン・トム寺院はプレア・ヴィヘア以上に衝突の緊張感が高かった遺跡ですが、現在ではそうした緊迫感はだいぶ緩んできているようです。ただし、やはり塹壕や機関銃が未だに据えられており、完全に緊張の糸を解いたわけではないようです。

 現在ではカンボジアとタイのどちらからもアクセスすることができ、境内には両国からの観光客が混ざっています。ただし、双方の兵士が訪問客を監視しており、カンボジア側から入場した観光客がタイ側の境界線に近づくと直ぐさま警告され、またその逆も同様です。タイ側からは遠足で中学生が多数訪れ、少し前まで緊張した地区であったとは信じられないような状況です。タイ側からの訪問客を増やそうとするタイ政府の思惑があるのではないかと思われるほどでした。


タ・ムアン・トム寺院はアンコールからピマイ寺院へと至る王道上、ダンレック山脈を越える要所に位置しています。プレア・ヴィヘア、ニャック・ボアスと並んで、ダンレック山脈上の三大寺院に数えられることもあります。

寺院のカンボジア側の麓にはプラサート・チャンという寺院が位置しており、またタイ側にはタ・ムアン・トイ、タ・ムアン等の施設が配置されています。プレア・ヴィヘアのような立派な石階段はありませんが、ここにもダンレック山脈を越えるラテライト造の階段とその途中にはテラス状の遺構が見られます。

過去の修復工事によってオリジナルの状態が大幅に失われてしまったために、研究の幅が狭まってしまったことが残念なところですが、山上寺院の建築的特徴を色濃く示す重要な遺跡であることは間違いありません。

これまでに正確な図面等が作成されたことがないため、今回の調査では伽藍内の各遺構の平面図の作成を行いました。また改めて、伽藍全体の配置測量を実施する予定です。

寺院の東方にはタ・クロバイと呼ばれる砂岩造の祠堂がやはりダンレック山脈の尾根上に位置しています。

少し前まではやはりここも一触即発の緊張地帯で、カンボジア側からは急な崖を登るロープウェーがあり前線との物資供給などに利用されていましたが、現在は運休しています。代わりに寺院西方からの車両道が建設中で、カンボジア側の領土主張が示されているようです。(一)

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