ユネスコ世界遺産に登録されて以降、カンボジアとタイとの領有権問題が生じていたプレア・ヴィヘア寺院が2010年12月初めにようやく沈静化しました。現在でもまだ外国人観光客の自粛が促されてはいますが、ようやくカンボジア側からは比較的安全に訪問できるようになりつつあります。
カンボジア側からはダンレック山脈の急な崖を越えなくてはなりませんが、現在は寺院西側の急坂が多数の重機で急ピッチで改修されており、近い将来、より快適に車両でも寺院付近までアクセスすることができるようになりそうです。
また、第五ゴープラへと至る寺院東側の石階段による山道には麓から連続する長大な木道の設置がほぼ完成しています。車で寺院まで入山し、帰りはこの修験道のような木道で下山するというルートが将来的には一般化することが予想されます。
タイ側はまだ開いていませんが、寺院入り口付近にはお土産物店が並び始め、タイからの入場を管理する小屋や木道の準備も進められています。
寺院そのものは、すでにプレア・ヴィヘア機構によって整備が進められ、危険箇所への支保工や木造の階段が設置されつつあります。また、参道脇の石灯籠の修理や、境内の散乱部材の整理なども進められ、寺院内ではこれまでに気づかなかったような痕跡も多数見ることができます。
また、プレア・ヴィヘア機構によって山の麓では考古学的発掘調査なども行われています。
とはいえ、2年間にわたる衝突の傷跡は生々しく、特に寺院の正面付近、タイとの前線には広範囲に渡り塹壕の痕が残っています。
プレア・ヴィヘアは今後様々な国や機関によって開発・整備・修復されていくことが予想されますが、カンボジアとタイとの平和の象徴となるべく役割をぜひ担って欲しいと思います。
日本国政府アンコール遺跡救済チームと早稲田大学・名城大学研究グループは2011年3月より寺院全体の平面測量を始めとする調査を開始する予定です。(一)
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