サンボー・プレイ・クック遺跡群にて3週間にわたって実施していたプノンペン芸術大学、メコン大学の建築学部・考古学部生へのトレーニングプログラムを9月9日に完了しました。
今回のプログラムでは途中、日本から来た大学生のスタディーツアーや、ボランティアグループのメンバーと活動を共にすることも多くありましたが、主なトレーニングとしてはプラサート・サンボー内での発掘調査に取り組みました。
調査エリアの選定・測量・グリッドの設置にはじまり、発掘の方法や遺物の収集と記録、遺構の見方や写真撮影、図面記録といった一連の作業を経験することになりました。
長さ33mのロングトレンチでの作業では、中央祠堂の階段を西端として、中央テラスの床面、中央テラス東の階段、そして内周壁東門の間の参道遺構が確認されました。東門の付近では後世の増築跡が確認されたほか、テラス東の階段脇からもやはり後の時代に掘り込まれた柱穴らしき痕跡が認められました。
出土した石製の彫刻遺物には、獅子像を四脚とした円形の台座というこれまでに前例のない遺物が発見された他、アンコール時代の男性神の頭部、プレ・アンコール期のリンガなどが確認されました。また、中国陶磁器をはじめとし、複数のクメール陶器や土器、また金属器の出土もありました。
最終日には事務所にて2時間以上にわたる発表会が行われ、発掘調査の結果をはじめ、遺跡周辺の村落調査の様子などについても報告があり、とても充実した内容になりました。
こうした現役の大学生が大きな経験を積んだことに加えて、今回はトレーニングの指導に加わったカンボジア人の若手研究者3名のパフォーマンスが大きな成果でした。考古学を専門とする早稲田大学留学生のメンホン君、JASAの考古学担当のワッタイさん、そして文化芸術省のビタロン君がそれぞれ、熱心に学生の指導にあたりました。彼らも学生時代であった数年前には様々なトレーニングプログラムに参加していましたが、それが指導する立場となってやりがいを感じてくれたように思います。
発掘エリアはテラス外では埋め戻し、テラス上ではさらに拡張し全面での整備を進める予定です。
本調査は「文化財保護・研究助成財団」と「住友財団」からの支援を得て進められているサンボー・プレイ・クック遺跡群保全事業の一環として行われています。(一)
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