中央テラスのクリアランス

サンボー・プレイ・クック遺跡群の中でも最も大きな複合寺院の一つである,プラサート・サンボーでは,2008年10月より中央テラスのクリアランスを行っています。このテラスの上には,この寺院の本殿となる主祠堂が配されており,伽藍全域の中央に位置しています。

 

サンボー・プレイ・クック遺跡群では,2001年より早稲田大学建築史研究室とカンボジア文化芸術省との共同事業となる「サンボー・プレイ・クック遺跡群保全事業」が開始されましたが,その初年度に国連世界食料基金からの支援を受けて,この主祠堂周辺に堆積していた煉瓦や土砂のクリアランスを行いました。

 

建立当初,この主祠堂は伽藍の中でも,ひときわ大きく,荘厳な建物であったものと推測されますが,現在では屋蓋(建物の屋根)は崩落し,壁体の上端までしか残されていません。2001年の時点では崩落した建物上部の煉瓦が周囲に堆積して全体として小高いマウンド状になっていました。

 

2001年に,堆積した煉瓦の除去を行いましたが,その際には,テラスの上面までの全ての煉瓦はクリアランスしませんでした。その後,プノンペン芸術大学の考古学部と共同で,このテラス上に2×2mほどの範囲で小さなトレンチを入れ,テラス上面の残存状況についての調査を行いました。この調査によって,テラス上面は,完全な状態を留めているわけではないものの,煉瓦積みの構造体は確実に残されていることが確認されました。その後,寺院の中心に位置し,最も重要なエリアであるこのテラスの全面的なクリアランスが望まれている状況にありました。しかしながら,各祠堂のサポートや塔内のクリアランス,その他の優先すべき調査が先行し,これまでテラスでの作業には着手することができずにいました。

 

2008年に,ようやくこのクリアランスの作業を開始することができ,今に至っています。現在は第一段階として,テラスの北西象限のクリアランスを進めています。

 

クリアランスの結果,テラス上面には大型の砂岩が敷き詰められていたことが明らかとなりました。また,テラスの北西隅には小さな煉瓦の祠堂が確認されました。この祠堂の装飾部位であるリンテルは7世紀の様式でしたが,この部材は加工して再利用された痕跡が認めらたため,この寺院が建立されたと推測される7世紀よりも後世に増築されたものと考えられます。テラスの四方には砂岩造りの階段が取り付いていますが,北面・西面のそれぞれからは砂岩長材により構成される階段が出土しました。また,主祠堂の北・西面からも扉の前方に階段が確認されました。ただ,テラスと主祠堂それぞれの北側の階段は砂岩材がひどく痛んでおり,また原位置から大きく動かされた位置で出土しました。にもかかわらず,砂岩直下の煉瓦積みはほとんど損傷しておらず,これらの石材がなぜ攪乱されたのか原因が判りません。おそらく重さが1tはあろうという石材も含まれており,そう易々と動かせる代物ではありません。

 

今回のクリアランスでは,こうした散乱している石材を原位置に復位し,またテラス上面やテラスの縁の脆弱化した煉瓦積みを補強してゆく予定です。こうした修復処置を開始する前作業として,各部材の発見された位置や煉瓦の状態を記録する図面記録・写真記録・三次元形状記録を行いました。煉瓦積みの補強作業も含まれますので,雨季に入る前には一通りの処置を終えるように作業を進めてゆく予定です。

 

 

また,3月初めより,サンボー・プレイ・クック遺跡では,早稲田大学の学生ボランティアグループ「JUJU」が周辺村落の調査や地元の高校生との交流活動を行っています。今回は約10名の大学生が,地元の高校に創設された自主グループ「ASCA」の高校生約20名と共同で活動をしています。

遺跡群周辺の村落内でのホームステイや聞き取り調査,地域行政との会合などを通じて,遺跡という文化資源を地元住民がどのように受け止め,どのように活用し,どうやって相互に有意な関係を築くことができるのか,といったことを学生ならではのパワーで取り組んでいます。(一)

 

 

*「サンボー・プレイ・クック遺跡群保全事業」は文化財保護・芸術研究振興財団ならびに住友財団からの支援を得て進められています。

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