サンボー・プレイ・クック遺跡の煉瓦修復試験

サンボー・プレイ・クック遺跡の保全

サンボー・プレイ・クック遺跡群の煉瓦造遺構を修復するための材料試験と工法試験を行っています。

遺跡群内のプラサート・サンボー寺院では、ここ数年間、発掘調査を行っていますが、様々な煉瓦遺構が新たに出土しています。特に、昨年からは中央の一辺20m四方のテラスの発掘調査を行い、これまでに西側半分のテラスがほぼ出土しましたが、各所ともかなり傷んだ状態にあります。このままでは、劣化が進んでしまうことから、これを埋め戻すか、あるいは適切な保存処置をすることが必要です。

七世紀に建立されたこの寺院内の発掘調査からは、後年のさまざまな増改築が確認されており、それら全ての出土した遺構を保存することは難しい状況にありますが、中央テラスは少なくとも一度の改築が認められているものの、出土したそのままの状態で保存することが可能です。そのため、中央テラスの煉瓦積みを保存するための方法を検討しています。

煉瓦は地盤沈下や煉瓦の自然落下等によって部分的にかなり変形している上、人為的な破壊の被害も認められます。特に、樹根の侵入に伴う変形が著しく、もともとは密着して積み上げられていた煉瓦積みの各所に亀裂や剥落が生じています。これらの亀裂や目地開きは、さらなる変形や崩壊の原因となる他、新たな植物が根を張る場所を提供してしまうことになります。

石積みの修復工事と同様に、変形した建物は各部材を解体して、再び積み上げることができれば良いのですが、煉瓦造の場合はそうはいきません。劣化した煉瓦では、解体した各部材が壊れてしまいますし、何より、無数の煉瓦を一つ一つ解体して元に戻す作業は現実的に不可能に限りなく近い仕事となります。

そのため、変形を残したままに、亀裂や目地開きを充填し、これ以上の劣化・破損が進まないようにする方法を検討しています。そのために必要となるモルタルの材料試験、そして充填のための工法の試験を行っています。

これまでの材料試験である程度の材料の選択、配合が決められていますが、現場作業での施工性がやはりなにより重要な点となってきます。そのため、現場で試験施工を行って施工性の確認を進めています。

試験はバイヨン寺院で石材修復の工事にあたっているベテランの作業員数名と、カンボジア人専門家も参加し、現地作業員と共同で行われています。何回かの試験施工を行った後、最終的な修復方法の決定を図る計画です。(一)

*サンボー・プレイ・クック遺跡群保全事業は、文化財保護芸術研究助成財団と住友財団からの支援をいただいて進められています。

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