本尊仏修理と移動についてのシミュレーションをしてみたが,もう一つ考えないとならない問題がある。「中央塔主室の地下の構造強化」について。
中央塔における発掘調査やボーリング調査については,以前にもこのブログで紹介したことがあったが,重要な結論の一つとしては,過去の発掘調査後の埋め戻しがきわめて緩い,ということにある。
もしも,本尊仏を室内に安置してしまえば,将来的に中央塔の基礎強化のために埋め戻しをし直す際には,これを再び移動しなくてはならなくなるし,また,そもそも15トンほどのこの石仏を室内に安置して構造的に十分に支持されるのか?という疑問もある。
この点については,これまで地盤や構造の専門家による意見が割れており,15トン程度なら十分に現状の構造でも持つだろう,と推測される専門家と,いやいや十分な基盤の強化が必要だろう,とされる専門家の意見もある。
いずれにしても,中央塔の上部構造の長期的な安定化のためには,基礎の強化は不可欠であるという点では意見の一致を見ているので,本尊仏の設置前にその直下の構造許可が求められるところであろう。
いろいろな強化方法が考えられる。
1.再度,縦穴を掘り下げて,下から順に突き固めながら埋め戻す。この場合には,縦穴が崩落しないように十分な支保を施しながら掘り下げてゆく必要がある。支保の方法について高い専門性をもって検討を要することになろう。場合によっては支保工そのものを地下に残すことにもなるだろう。
2.ボーリング孔を利用して,強化剤を下方から注入充填して強化する。この場合には,その方法や素材について十分な検討を要するところではあるが,再びこれを掘り下げるという調査は難しく,リバーシブルな手法ではない。
3.基礎杭を打ち込んで,本尊仏の支持にする。この方法では,中央塔の基礎そのものの強化には関与せず,安置する石仏の安定性に限った処置となる。杭の深さについても、地山に到達させるべきか、あるいはその上方で留めても良いか、検討を要するところだろう。
4.最初の方法に類似した方法で,再び縦穴を掘り下げて,突き固める方法だが,過去の発掘調査の縦穴の最深部からやりなおすのではなく,必要な深さだけにとどめてこれを行う。例えば,床下5mまでに限って,十分な強度を再現して,本尊仏を支える耐荷板を設けると共に、塔壁体が内側に変形するのを防ごうとする方法。
いずれの方法においても,十分な事前研究が不可欠であるが,オリジナルの本尊仏の再安置にしても,レプリカの設置にしてもなんらかの基礎の改善が求められるところである。
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