11月19日(木)
カンボジアでは、ほとんどの子供たちが、まだ一度もアンコール遺跡を訪れたことがありません。
日本のように、小学校、中学校に、遠足や社会見学授業などの教育プログラムがないカンボジアでは、アンコール・トム遺跡に隣接している村であるアンコールクラウ村の中でさえ、遺跡にまだ一度も行ったことがない子供たちがいるほどなのです。
一生に一度、アンコール・ワット詣でをするのが夢、というのが一般の、特に農村部のカンボジア人の姿なのです。
ましてや、体系的にアンコールの歴史や文化遺産について、また遺跡を守る人々について教わる機会はほとんどないと言っていいでしょう。
そこでJSTでは、アンコール遺跡保存修復チーム(JSA)の専門家集団が母体となってできたNGOならではの、かねてから温めていた企画である、小学6年生を対象とした「カンボジアの子供たちのためのアンコール遺跡 社会見学」を始めることになりました。
今回はその第1回目。
西バライ近くにあるチェイ小学校の6年生60名と先生3名を招待しました。
朝7時15分。
JST代表のチア・ノルがチェイ小学校に到着すると、すでに参加する60名の6年生たちは、背の順に2列に整列して、先生のお話を真剣に聞いているところでした。
出席する生徒の名前はリスト化されており、3台のチャーターバスのうち、誰がどのバスに乗るかまで、すでに決められていました。これなら安心です。
チアも生徒の前で一言。今日の日程と目的、注意事項などを話しました。
「アンコール・ワットへ行ったことがある人!」生徒60人に聞いたところ、38人が行ったことがあるとのこと。バイヨンへ行ったことがある生徒は12人程度でした。
アンコール・ワットまで、現在は、快適な舗装道路を通って、車でなら15分ほどで行けるこの地域でさえ、この数字なのです。
7時30分
バス3台に別れて、チェイ小学校を出発します。
8時
JSTが企画・運営しているバイヨン・インフォメーションセンター
(http://www.jst-cambodia.net/baiyon/cat28/)到着。
60名の生徒は、私語もなく、きちんと整列して施設内に入っていきます。
ちょっと緊張気味かな?
まずは、バイヨン遺跡についてのメインビデオを皆で見、2つのグループに分かれ、バイヨン・インフォメーションセンターの案内人であるヴォーリャック嬢とソパリー嬢にそれぞれついて、パネルや遺物などの説明を順に受けていきました。
このチェイ小学校、校長先生が特に教育熱心で、日曜など学校が休みの日でも、校長先生一人でもくもくと校庭内の補修や作業をしたりしている他、野菜栽培、日本語教室、アプサラ伝統舞踊の教室など、子供たちの課外教育も盛んなよう。
他のカンボジアの小学校とちょっと違うのではないかという印象を持っていましたが、さすが、子供たちの学習意欲もかなり高いようです。
皆、真剣に説明を聞き、ノートにメモをとっていきます。
案内人も説明に力が入ります。
9時過ぎ
再びチャーターバス3台に乗り込み、バイヨン遺跡南経蔵の修復現場へ。
9時半
いよいよ遺跡修復現場に到着。
まずは、カンボジア専門家のプロス氏による説明です。
暑い日差しを受けながらも、皆、真剣に説明を聞き、ノートにメモをとっています。
通り過ぎる外国人観光客も、あたたかい眼差しで、カンボジアの子供たちを見守っているようです。
さて、次は一般の観光客は立ち入り禁止となっている南経蔵の修復現場へ。
そびえる単管足場と、大きなラテライト石を間近に見ながら、少しこわごわと現場に入っていきます。
そして、遺跡修復のチーフであるソティ氏から修復の手順や過程を、写真を見ながら説明を受けていきます。
ポイントとなるところは、繰り返し復習し、皆、修復について、よく理解したことでしょう。
様々な質問も飛び交っていましたね。
最後に皆で足場の上に上り、上部が解体され修復作業が続いているバイヨン南経蔵を上から眺め、クレーンによって石を吊り上げる様子も見学することができました。
11時半
ちょっと後ろ髪を引かれる思いで、遺跡を後にします。
途中、用意されていた人数分のお弁当を受け取り、チェイ小学校へと戻ります。
皆、どんなことを感じ、考えたでしょうか?
後日、学校から感想文が届くことになっていますので、このブログ上でまたご紹介したいと思います。
今回のチェイ小学校6年生対象の社会見学は、和歌山県の紀南ユネスコ協会様からいただいた「カンボジアの子供教育」のための寄付金を使わせていただきました。
JSTでは、今後、この「カンボジアの子供たちのためのアンコール遺跡 社会見学」を中心活動の一つとし、まずは地域の小学6年生を対象に、継続的に続けていきたいと考えています。
アンコール遺跡にまだ行ったこともない多くのカンボジアの子供たちが、自国の文化を少しでも理解し、自分達の祖先が築き上げた文化的遺産を次世代に引き継いでいくきっかけになることを願って・・・・。
(よ)
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