4月7日(火)
アンコール・クラウ村の子供たちを対象にした遺跡修復講座の2回目は、実際の修復現場の見学会でした。場所は、JSA(日本国政府アンコール遺跡救済チーム)が現在修復活動を行っているバイヨン遺跡の南経蔵。
修復現場で使うユニッククレーンに乗って颯爽と現れる村の子供たち。
今回は、約50名の子供が参加しました。
皆で一緒に遺跡修復現場の見学会、ということで、どの子も少し興奮気味。さらに、いつもとどこか違う・・・と思ったら、皆、シャワーを浴びて、いつもよりきれいな洋服を着て、こざっぱりとしています。
まずは、バイヨン南経蔵修復現場前で、修復チームのカンボジア人リーダーであるソティ氏から概要説明を受けました。
遺跡を背にして、左からソティ(JSA修復チーム専門家リーダー)、チア(JST代表)、サオ・サム棟梁(JSA修復チーム棟梁)。
サオ・サム棟梁は、1960年代からアンコール遺跡修復に携わってきた修復の大ベテラン。フランス、インド、ハンガリーの各修復チームを渡り歩き、15年前からJSAの遺跡修復棟梁として、現場に泊まり込みながら、すべての修復作業員をまとめているJSA修復チームの”ぬし”のような存在です。
ソティ氏の説明の後は、まさに現在、解体作業が行われている最中の南経蔵へ。中心部の版築層、版築層周りのラテライト構造体、そして砂岩の化粧材とで南経蔵がつくられているということが一目でわかる生の解体現場を見るのは、子供たちももちろん初めて。修復専門家として15年の実績をもつソティ氏が、今日は、子供向けにわかりやすく、噛み砕いて説明してくれます。
子供たちは足場を移動し、さまざまな角度から、解体された南経蔵に見入っていました。
この頃になると、最初の緊張感もほぐれ、皆、屋台で買ったジュースを飲んだり、かき氷を食べたりしながら、リラックスムードで修復現場を見学しています。
見学場所で説明者の話を聞きながらジュースを飲んだりお菓子を食べたりするなんて、日本の見学会ではご法度!だと思いますが、小学校校庭内の屋台で売っているお菓子や飲み物を、休み時間に生徒が買って食べるのが普通、というここカンボジアでは、ごくごく当たり前の光景のようですね。
接着剤を使った劣化石材の補修作業場では、子供たちが実際に作業を体験する場面も。
子どもたちの質問に答える作業員。同じ村の青年なので、皆、気軽に話しかけています。
中には、自分の子供が見学に来ているという作業員もいて、ちょっと照れくさそう。でも、いつもより真面目顔で仕事をしているので、仲間に笑われていました。
石彫作業に興味のある子どもたちは、作業の様子をじっと見つめていました。
南経蔵上部構造体の仮組現場です。サオ・サム棟梁と同じく、1960年代から遺跡修復に携わってきたチン・ダオイ副棟梁が、子供たちに作業手順を説明しました。
目地と目地とがぴったりと擦り合わされて積み重ねられた、アンコール遺跡の化粧砂岩。建設当時は、どのようにして加工されたのでしょうか?
その一つの方法として、バイヨン外回廊に彫られている建設当時の風景のレリーフをもとに、 “石材加工器”が作られていました。
再現作業が始まります。
最初は摩擦で動かなかった石も、石と石の隙間に水を流し込むと、滑らかにスライドして動きだしました!こうして、石の表面を最終加工していたのですね。
こうして、村の子供たちの興奮醒めやらぬまま、はじめての遺跡修復現場見学会が無事に終了しました。
子どもたちのみならず、遺跡修復作業員にとっても、自分たちの仕事の意義と誇りを再認識でき、とても意義深い一日となりました。
遺跡修復チームのカンボジア人専門家からも大好評で、次はぜひ考古学発掘の実演を子どもたちに見せよう、いや次はバイヨン遺跡やアンコール・ワットに彫られているレリーフの説明を、などと新企画案が次々と出てきました。
JSTでは、今後もこのような、JSTならではの企画を実施していきたいと考えています。
(よ)
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