12月12日朝9時より、バイヨン寺院にて日本国政府アンコール遺跡救済チーム第三フェーズ完了式典が執り行われました。式典はアンコール遺跡の保存と開発のための国際調整会議(ICC)の第一日目の行事として実施され、カンボジア ソク・アン副首相、在カンボジア日本国大使を始めとする各国大使、ユネスコ関係者、アプサラ機構・文化芸術省関係者、国際的な修復・調査隊メンバー等、約300名が出席されました。
12月に入り、カンボジアも急速に涼しくなっていますが、当日はスーツ姿が心地よい、やや肌寒いほどの天候で、清々しい透き通った空気の中で厳かに式典が進められました。
第三フェーズは2006年より開始され、5年半にわたり進められましたが、事業の中心的な仕事として取り組まれた南経蔵修復工事の前に舞台が設けられ、式典は国歌斉唱より開始されました。ユネスコプノンペン代表、JASA共同代表中川武、カンボジア副首相ソク・アンからのスピーチと続き、その後にメダルの授与、そして完成した南経蔵のテープカットが行われました。
第三フェーズはそれ以前とは事業体制が異なり、日本-カンボジアの共同体制という性格がより強められました。日本では、早稲田大学が事業の運営を担当し、国内の大学、研究所、企業より建築学・考古学・保存科学・地盤工学・岩石学・生物学等の専門家をはじめとして大勢の研究者に修復工事と遺跡保存の研究のために参加いただきました。実に多くの方々の御協力と御指導をいただきました。
南経蔵の部分解体再構築工事の他には、中央塔の構造補強に関する研究、内回廊浮き彫りの保存方法に関する研究、人の増改築や建造方法の解明を目的とした考古学的研究等に取り組みました。また、アンコール遺跡群の国際的な活動や遺跡の歴史を紹介するバイヨン・インフォメーション・センターの開設も大きな試みでした。観光客への事業紹介の他、カンボジア国内の児童・青年にむけた遺跡教育活動に大きく寄与することができたと思っています。
修復工事はこれまでに保存修復の技術移転を進めてきたカンボジア人専門家6名と現場技術・技能員計70名が現場の先頭に立ちました。1994年からの事業発足当初は日本から派遣された多くの施工管理者と石工が現場作業の指導を担当していましたが、今期はほぼ全ての工事がカンボジア人の手で行われるに至っています。
人材育成の取り組みが着実に芽を結び、カンボジアの精神的な柱ともいうべきアンコール遺跡の保存をより自立的な体制で推進していくために大きく前進したと思っています。
また、式典は2011年より2016年にかけて実施されることが予定されている第四次フェーズの開始式も兼ねて行われました。中央塔・回廊浮き彫りではこれまでの研究成果にもとづき、実施設計・工事に取り組む予定です。また、外回廊の東門、隅塔等の倒壊危険箇所の工事、バイヨン寺院内外の考古学的研究は11月より着手しました。
今後とも多くの方々に支えていただきながら、様々な人と人、そして学問間での自由な連携を目指し、また個々人がより高い技術レベルで修復工事や各種専門の研究や仕事に取り組めるよう努力していきたいと思っています。
今回は竣工式典のご報告ができ、団員一同心より喜ばしく思っております。ありがとうございました。
*第三フェーズの事業報告書は以下のサイト内のRestoration Reportにてご覧いただくことができます。
http://archives.bayon-project.org/rwsl/index.html
工事図面など一部サイトの工事中となっておりますが、近日中には全ての製作が終わる予定です。
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