当初、今回の調査はできるだけ必要最小限の労力で効果的に必要箇所を確認して終了しようと、いうことで始められました。
しかし、発掘調査の常。そんなに事は容易には片づきません。常に期待と予想を裏切ってくれます。
そんなことで、すでに10日目に入ってしまいました。
室内中央の盗掘孔を掘り下げます。ますます白色の栗石が多くなり、変わらず濃い褐色土が続きます。上層と異なり、この土は均質で埋め戻しの際に利用されたとは考えにくいのですが、それにしては土が緩く創建当初のものともまた考えにくい状態です。
掘り下げが進み、壁が大きくなってきましたので、側面をクリーニングしていくことになりました。床面となる砂岩の下層のラテライトの下にはもはや石材はないようです。
先日確認されたのと同様に、やや水平に拡張すると堅い土が現れます。一部には栗石が混じっていますが不規則です。この壁、垂直に立っているわけではなく、下方に行くほど広くなっており、全体としてオーバーハングするようです。この勾配がどこまで続くのかは分かりませんが、あまり下層で広げてしまうと、発掘穴そのものが崩れてしまう危険性もあります。
堅い壁体の表面を広げていきますと、軟らかい中央部の土とこの壁の間には薄い汚れた黒い層が挟まっていることが確認されました。つまり、ここからは、堅い壁体が一時期露出されたままに放置されていた時代があったことを推測することができます。
このため、中央部の白色の栗石混じりの軟らかい土は、盗掘後にやや時間がたってから梅戻されたものである可能性が高まってきました。(一)
*本調査は㈱竹中工務店からの研究助成を得て進められています。
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