バイヨン寺院正面・東参道の修復が完了しました!

ナーガ・シンハ彫像修復プロジェクト
こんにちは。プロジェクト担当の下田(島田)です。
ナーガ欄干・シンハ彫像修復プロジェクトはおかげさまで2017年4月でいよいよ5年目を迎えました。現在、カンボジア人専門家1名と、技能員8名が日々現場で修復技術を磨きながら、寺院の修復をおこなっています。
さて、少し前になりますが、去る2017年3月、
2014年4月よりおよそ2年半かけて行われたバイヨン寺院の正面である東参道のナーガ欄干、ライオン彫像の修復がついに完了しました!
参道上にバラバラに落ちていたり、倒れかかったりしていた欄干を修理・設置することで、景観的も変わり、寺院にとっても、観光客のみなさまにとっても、安心して見学していただけるようになりました。
今回は前編・後編として、この東参道での修復の様子をご紹介したいと思います。
(東参道の内、半分は以前ブログでご紹介したので、今回は残りの半分について!)
今回の前編では、どうしてカンボジアの遺跡はこわれていってしまうのか、そのメカニズムについて東参道の修復前の様子とあわせてご紹介します!
カンボジアの寺院の多くは、東を正面に造られていることが多いですが(ヒンドゥ教的な理由や土着信仰による理由など、諸説あります)、
バイヨン寺院でも同じく、創建当時も今も、東側の参道がメーンの入口です。
かつてはこの参道には必要に応じて木造の建物が立てられ、
さぞかし荘厳な姿であったでしょう。
↑ぐるっと網掛けをしている部分が、このプロジェクトで修復対象としている欄干や彫像がある外回廊と、東参道です。ちなみに、今回修復が終了したので、赤いエリアです。
さて、バイヨン寺院にはどれだけの石材が使われているかご存知でしょうか??
一説ではその数40万個とも推測されています。
これだけの巨大な遺跡を支えている、寺院の基礎部分(基段と呼びます)、見た目は石造ですが、実はその中身は大部分が堅く突き固めた土なのです。
↑東参道での基壇の解体中の様子
中身が土であることは、カンボジアの気候を考えると大変理にかなっているのですが、一方でデメリットもあります。
長年の雨の影響で、少しずつこの土に雨が浸透し、緩んで土が外へ流れ出してしまうのです。
また、そうしてできた表層の石材と石材の隙間に、植物の種などが入り込み、長い年月をかけてそれが成長し、時には巨木になってしまいます。
巨木は寺院の基礎部分に根を伸ばし、それがさらに表層の石材をゆがませていくのです。
↑寺院に張り付いた巨木。根っこの中に欄干の部材が飲み込まれてしまっています。
↑中の土が流れ出して、床面が傾き、大きな隙間ができています。こうなると欄干ももうグラグラです。
また、20世紀初頭に行われた修復の箇所も、すでに一世紀たち、かなりぼろぼろになってしまっていました。。
↑既往修復で接着していたものがとれてしまい、再びバラバラになってしまったなナーガ彫像
東参道は、現在も最も多くの観光客が寺院の玄関として通る場所です!
このままでは、観光客も危険ですし、残念ながら落ちた欄干に観光客が乗るなどして欄干の劣化も進んでしまいます…
そういうわけで、東参道の修復が行われることになりました!
(1)71.2-1SE_before.JPG
↑欄干が落ちてしまっている様子。どちらもバイヨン寺院の入口脇です。
後編では、東参道での修復の様子や、修復後の生まれ変わった欄干や彫像の姿をご報告します!
(麻)

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