みなさまこんにちは。2月末までJSTでインターンをさせていただいていた仲尾です。
JSTのブログ『地域と歩む』のほうにブログを書かせていただいていたのですが、今回こちらの『遺跡修復の現場から』のほうにブログを書かせていただく機会をいただきました。
まず、少し私のことについてお話させてください。
私がJSTでインターンをしてみたいと思った理由の一つに、アンコール遺跡群周辺に暮らす人々に関心を持っており、その地域の方々と関わってみたかったというものがあります。また私は幼いころから、遺跡など昔の人々が創りあげた建築物を見るのが好きでした。
アンコールトム内にあるバイヨン寺院では、JSTが日本ユネスコ協会連盟との協力のもと、JASAの技術協力を受けて行っている遺跡修復事業『バイヨン寺院ナーガ・シンハ石彫像修復プロジェクト』が進められています。
このプロジェクトの意義は、遺跡の修復をすることはもちろんですが、もうひとつ重要な目的が「カンボジア人からカンボジア人への人材育成」を行うことにあります。JASAの日本人専門家から技術指導をうけたカンボジア人が、その技術をカンボジア人の遺跡修復作業員へと伝えていき、遺跡修復を自らの手で行えるようになることを目指します。
現在この修復プロジェクトチームは、若手専門家のソピアックさん、そして元JASA作業員であり現在は当プロジェクトチーフのTheangさん率いるカンボジア人修復作業員8名で構成されています。このプロジェクトに携わる修復作業員のほとんどは、遺跡周辺の村出身です。彼らはどうして修復作業員という仕事を選んだのか、どんな思いで修復を行っているのだろうか、現場を見るたびに彼らに尋ねてみたい気持ちが大きくなりました。
今回、JSTの遺跡修復専門家であるソピアックさん、JSTが行う修復プロジェクトのサポートや遺跡研究を行っていらっしゃる下田麻里子さん、そして現場作業員の方々にご協力いただき、遺跡修復作業員へのインタビューを行いました。その様子をこのブログでお伝えしたいと思います。
まず、これが主な修復の工程になります。
<主な修復の工程>
1.修復前の状態を図面と写真により記録する。
2.彫像と欄干部分の解体。解体中も図面と写真による劣化状況の記録を行う。
3.ミリメートル方眼紙上に1/10 縮尺で、部材5 面の記録を行い、スキャンデータとして保存する。
4.部材ごとに修復前後と修理中の状態をカメラで記録。
5.水と柔らかいブラシを使用してクリーニングを行う。
6.結合、接着、注入、強化、新材への部分的な置換、補填といった修復工法を適宜応用し、修理作業を行う。
7.仮組み作業により最も適切な設置箇所・方法を確認し、また必要な新材補填箇所を確認する。
8.欄干・彫像を設置する基壇の整備を行う
9.再構築作業にて、最終的に安定して欄干を設置する。
10. 修復後の状態を図面と写真により記録する。
作業員によって、得意な工程があるとのことでしたので、得意な工程についての質問も作業員の方に行いました。
また、新しい作業員2名が昨年4月から加わったとのことでしたので、彼らとのかかわり方についても尋ねました。
このインタビューは、私が質問したことを専門家のソピアックさんを介して答えていただくという流れで、一問一答形式になっています。
次回から、作業員の方々のインタビューをお一人ずつ更新していきますので、どうぞお楽しみに!
仲尾
本プロジェクトは2012年より、JSTと日本ユネスコ協会連盟の共同事業として、JASAの技術協力のもと始められました。バイヨン寺院外回廊のナーガ彫像、ライオン彫像、欄干を対象として進められています。
本プロジェクトは皆さまのご支援により成り立っています。ご寄付をいただいた方のお名前は、バイヨン寺院のすぐ近くに立つ、バイヨンハット脇の銘板へお名前を掲載させていただきますほか、年1回活動報告書をお送りさせていただきます。
※事業終了後は、銘板はカンボジア政府の管理下となります。
詳細はこちらのURLからご確認下さい。
http://www.unesco.or.jp/isan/restorationproject/
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