コンポン・トム州サンボー・プレイ・クック遺跡群にて調査を開始しました。
この遺跡群は7世紀に栄華を誇ったとされるチェンラ王朝の王都「イーシャナプラ」の都城址です。
遺跡群は多数の煉瓦造の寺院がよく知られていますが、寺院がまとまってある地区の西側には、一辺2kmの方形の環濠に囲繞された都市が残されています。この地区内の調査はまだほとんど手が付けられていませんが、これまでの踏査により60近くの煉瓦造遺構が確認されている他、多数の遺物が収集されており、地下には良好な状態で遺構が残存していることが予想されます。
この都城址の中には現在オー・クル・カエと呼ばれる村落がありますが、この村を貫通する道路が約一ヶ月前より村民によって造られ始めました。ここは文化財保護地区内ですので、こうした道路工事は禁止されていますが、十分な管理体制が敷かれていなかったために、カンボジア政府への届け出がないままに工事が行われてしまったのです。幸いにも地下を深く掘り下げることはありませんでしたので、大きな破壊活動にはつながりませんでしたが、文化芸術省等による指導を徹底し、こうした工事が適切な管理下で実施されるよう努めていく必要があります。
新設された道路は、都城址の内部に約1.5kmにわたるものですが、道路脇を約1m掘り下げて採取した土砂を路面に積み上げています。結果、深さ1mの溝が道路脇に側溝のように断続的に連なった状況になっています。
こうした側溝を観察すると煉瓦遺構や土器などが出土している地点が複数認められました。そのため、緊急でこれらの遺構の調査を実施することになりました。
長さ1.5kmにも渡る約80箇所の側溝の位置を全て記録し、特に重要な遺構が露出していると考えられる地点の土層や遺構の形状等を記録する作業を進めています。
さらに、側溝の下面からはハンドオーガーやジオスライサーを利用して地下の構造を調査し、都城内の地下埋設遺構についての調査を進めています。
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