9月20日、カンボジア文化芸術省における会議において、来年2月に正式にカンボジア政府よりユネスコに対して世界遺産登録を申請する候補地として、サンボー・プレイ・クック遺跡群が選定されました。
また、あわせてカンボジアの古式格闘技であるボッカタオが無形文化財として申請されます。
世界遺産の申請候補地としては、バンテアイ・チュマール寺院も有力でしたが、サンボー・プレイ・クック遺跡群では、歴史的な重要性・古代都市がほぼ完全な形で残されているという事実が、最終的な国内選定で決定打となりました。
これまでにも本ブログで紹介していますが、サンボー・プレイ・クック遺跡群では1998年より早稲田大学建築史研究室が調査・メンテナンスを進めています。また昨年末より小規模ではありますが、修復工事も始めました。
煉瓦造を中心とした数々の遺構は、亜熱帯気候という環境にあって、極めて脆弱な状態にあり、メンテナンスの手を緩めるとすぐに煉瓦の建物は草木に覆われ、寺院全体が密林へと呑み込まれてしまいます。遺跡を崩壊から保護するためには、継続的なメンテナンスが必要であり、現在では日本からの支援にもとづき、こうした保全活動を進めていますが、最終的にはカンボジア政府による持続的な保護活動の体制作りが求められています。
こうした体制作りを推進するために、国際的な責務を負うことになる世界遺産登録は大きな一歩となるはずで、かねてより強く希望し続けていました。
もちろん、世界遺産へ登録されることにより、遺跡そのもの、そして周辺地域に対して様々な影響が懸念され、十分な対策が求められるところです。
これまで、周辺住民の遺跡保全への取り組みとしてGTZからの協力を得て活動を進めてきましたが、今年12月で支援が終了します。その他、国連食糧農業機関(FAO)、国際労働機関(ILO)による支援のもと、マイクロビジネスのトレーニング事業を行っています。また、アジア開発銀行(ADB)からの支援要請を進めており、来年には遺跡群への道路整備を中心とした活動が開始される予定です。
世界遺産登録にあわせて、遺跡保全のための政府機構が設立されることが予想されますが、これまでのカンボジア国内の事例からはそうした機構と周辺住民とが調和的に両立しているとは言い難い状況があります。遺跡の保全にとって大きな前進となるために、マスタープランの策定や新機構の体制作りに加えて、こうした地域社会に対する問題にも備えていきたいと考えています。(一)
*サンボー・プレイ・クック遺跡群保全事業は「文化財保護・研究助成財団」と「住友財団」からの支援を得て進められています。
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