9月17日。晴れ。
ク―レン山。
ここは、9世紀から15世紀まで続くアンコール王朝の始まりの場所。古くから聖なる山として信仰の対象となってきた。かつての大王ジャヤバルマン2世はこの場所で、王が神と一体となって王国を納めることを宣言したといわれる。
その歴史上の大転換の舞台となったク―レン山は、標高400mほどのすりばち状の山の中に、多くの遺跡を残す。同時に、わずかな標高差にも関わらず、平野部とは気候や生態系が異なっていることでも知られる。同行したチアさんいわく、「ク―レン山は昔、豊かだったと思うよ。一年中果物ができるし。一回体験してみたいな~。」とのこと。
この神秘の山にへは、車で麓まで行き、そこから一人ずつバイクに便乗して、森の中に点在する遺跡を目指します。
この日のク―レンアタックに参加したメンバーは5名。5台のバイクが、雨期のぬかるんだ獣道を縦列で疾走する。ク―レン山中の遺跡の紹介は、他のメンバーに任せるとして、私からはク―レン山中の村と、それからバナナの話を。
この山の中には、現在7つの村があるという。その中でも最も大きく、かつ古くから中心であったのはアン・ロン・トム(An Long Thom)。「アン・ロン」というのは、「水が流れ出す窪地」というような意味。
この村の上流には水が湧き出す源泉がある。近づいて見ると、白い砂の中からぽこぽこと気泡が出てきて、青みがかった水が湧き出し口に湛えられている。これまでこの国で見た水の中で、最も清く、美しい。この水は小さな小川を通り、下流に広がる村にそそぎ、人々の生活を支える源となる。
大きな山に囲まれ、美しい水が湧くク―レン山中の村。村の中を通りがけに見回すと、それぞれの家は規模が大きく、生活物資も意外に揃っている。車がはいる道がないためか、子ブタがそのへんを我がもの顔に走り回っている。午後の日差しの中、落ち着いた印象が漂う。
村自体にも、暮らす人々の顔にも険がなく、逆に「底力」がありそうな、そこはかとない迫力のある村。ここは何度か足を運んでヒアリングしてみたいな~、と思わせる要素が走り去っていく風景のなかにあれこれ登場。山深いこの土地のこの村の存在を知っただけでも、今日のク―レンツアーは面白かったな、と思えるほどでした。
お尻が痛くなるほどのアップダウンのバイクツアーの終わりに、我々が見つけたもの。
それは・・・
こちら。ク―レン名物「赤バナナ」
なんと、バナナが赤いのです。そして、大きい!さらに、高い!
普通のバナナが1房3000~4000リエル。この赤バナナはなんと20000リエル($5)。でも、持ってみてその理由がわかりました。普通のバナナの5倍くらいの重さがある。1本一本が太くて、ムチムチ。
なるほど、これが豊かなク―レンの恵み。さっそくみんなでいただいてみました。
これが・・・うま~い。バナナなのに、カスタードクリームのような甘みとコクと、それでいて爽やか。この衝撃は忘れられない。しかも、一本でお腹いっぱいのボリューム感。こんなのが食べられるのなら、山暮らしも悪くないかもしれない。
ク―レン山の豊かさを舌で堪能し、それでも足りず、なんと苗木も買っちゃいました。
ちゃんと育つかな?ク―レン山の赤バナナ。
(ま)
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