旅の3日目 その2 ~冒険!遺跡だぜ~
今回ケップを訪れたもう一つの目的。
それは、この場所にあるクメール人の最初の王朝である扶南の時期に遡る洞窟遺跡。
カンポット州のこの地域には、コンポントラッチという名前の鍾乳洞で有名な山があります。
中には澄んだ湧水がプールのようになっていて泳げるところもあるらしい。
が、この日私たちが目指したのは、その隣の山にあるプラサート・チュッゴックと呼ばれる遺跡。
気のいいヒゲのバイクタクシーのお兄さんを案内人に、一本だけ舗装された道を延々まっすぐ走る。
3人乗りバイク(ドライバーさんと私たち二人)の一番後ろから見える風景。
ゆるやかなアップダウンの丘陵地。道の左右には、点々と過去に別荘だったフランス風邸宅の跡。
左手に広がっていた海が少しずつ遠くなり、道は山へと向かい始める。
青春ロードムービー的に90年代のジャパンポップスを熱唱しながら走ること40分。
カンボジアで、山は力の強い精霊が宿る場所。
そして、この山の鍾乳洞には、山の精霊の霊力を宿した聖なる水が落ちてくる。
だからこそ古い時代にはこの聖なる場所に早くから寺院が作られたようです。
山といっても、カンボジアは平野の国。この山も、日本でいうなれば「丘」程度の高さ。
丘の足元には現代のお寺が一つ。お寺守のおじさんの横に、不釣り合いな「チケット」の新しい看板。入場料は1$でした。
お寺の裏手から伸びる階段を上がると、ものの5分ほどで洞窟に到着。
あっさりと聖域に到着し、ちょっと拍子抜け。
もっと暗い洞窟の中を這うようにして進んでいく冒険のイメージだったのに。
まあ、と。中に入ってびっくり。
まるでヨーロッパの教会の講堂ような天井。これが、天然ものです。
その中に、壁の一部かのように、ひっそりと遺跡がありました。
長い年月で遺跡の壁全体が洞窟の一部になってしまったかのようなレンガ造りの建物。
天井の穴から漏れてくる薄あかりの中で寺院の中はよく見えない。
むしろ寺院そのものが、天然の神域に据えられたご神体のように見える。
山の霊気に身を浸すことしばし。
他の世界に連れて行かれそうな、そんな怖さを感じて外に出ると、「ああ、これかな」と納得の世界。
ほんの丘くらいの高さしかないのに、周囲の世界が全て眼下に収まる。
遠くの山までがまるで自分の領地のように感じてしまう。
高いところに対して、古代から人々が抱いてきた憧れは、きっとこういう光景を目にしたときなんじゃないかな、と。
ほんの少し、「神様の視点」を味わう遺跡体験となりました。
(ま)
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