遺跡修復で作成する図面ってどんなもの?

ナーガ・シンハ彫像修復プロジェクト
こんにちは!
JSTインターン生の堀です。
 
突然ですが、皆さん、遺跡修復の過程で行われる図面作成は、どのように行うかご存知ですか?

 

JSTでは、JASA(日本国政府アンコール遺跡救済チーム)の監修のもと、日本ユネスコ協会連盟と共にバイヨン寺院で「ナーガ・シーハ修復プロジェクト」を行っていますが、

具体的にどのように図面作成を行うか、JST遺跡修復専門家の島田麻里子氏に聞いてみましたのでご報告します!

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図面作成は、修復時には2回行います。

1回目は修復前、2回目は修復後です。

 

 図面作成をする理由としては、主に2つあります

① 修復前の石材の位置や並び順などを記録することで、解体修理をした後の再接地の際に間違えないようにする。

 遺跡は定期的なメンテナンスが必要であり、50年後あるいは100年後になるか、いつかはわからないが、いずれ後世に修復を行う人のために、今回はどのような修復を行っていたのか、修復前後の記録をしておく。

 

 

といった理由です。

遺跡は石を積み上げて出来上がっているため、

それらひとつひとつの石がどこに設置されていたのか

ということを記録しておかなければ、元の位置に戻すことは困難なのです。

また、その図面は後世に受け継がれる記録となり、

今後の修復にも重要な資料となるのです。

 

 

この図面というものが、どのように作成されるのか?

ということを知ってもらうために、

以前にもブログで紹介されたことのある

修復チームの一員であり、図面を描かせたらいちばん!

というDongさんの図面作成の方法についてご紹介します。

 

1.測量機を使って、書きたい範囲に基準となる点をいくつか設置す

 

2.その点を結ぶように実際に遺跡に墨で格子状に基準線をつける

 (これを「墨付け」という。ここまでが準備)

 

3.いよいよ方眼用紙の上に図面を20分の1の縮尺で書いていく。3人一組となり、1人が紙に図面を書き、残りの2人はメジャーや水平器を駆使して、書きたい石材の角やそのほかの特徴的なポイントを、先ほど付けた墨付け線から縦何センチ横何センチと次々に計って図面を書く人に伝えていく。

4.図面を書く人は、それを聞いてどんどん紙に点を書いていき、最終的にはその点を結んで描きたい石の形を書く。(この点をうまく結べるかどうかで、図面の良し悪しがきまり、センスを要する。Dongさんは元々絵も上手で、それが功を奏しているよう)

こちらは、JSTスタッフ同士で図面の描き方を練習している様子です↓

Dongさんからこの図面作成に関してひとこと

「図面を書いていて楽しいところは、図面がきれいに書けるとうれしい気持ちになるし、シャーペンで紙に図面を書くのが気持ち良いと感じるところ。図面が上手になるにはひたすら練習あるのみ。」

 

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計算をしながら慎重に図面を描くという作業は、

神経をすり減らしながら行う大変な作業だということを知りました。

 

遺跡と共に、それを修復する作業員がつくりだす資料も

これからの未来に残す遺物なのだとわかり感動しました。

 

今後もこの「ナーガ・シンハ遺跡修復プロジェクト」について

注目していきたいです。

 

 

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