東参道のシンハ彫像の修復開始!

バイヨン 彫像修復事業

2016年がはじまり、1月もあっという中旬になりましたが、今更ながら今年も皆様JSTの修復事業・ナーガシンハ彫像修復プロジェクトの方もよろしくお願い致します。

さて、今年は申年ですが、当プロジェクトは今「獅子」真っ最中です!

第2フェーズ開始以来、当プロジェクトではバイヨン寺院東参道の欄干、ナーガ彫像を中心に修復を進めてきましたが、2015年10月より、寺院正面の東参道に並ぶシンハ9体の彫像の修復を行っています。(シンハ彫像なんぞや、という方はブログ最後の豆知識をご覧下さい。)

バイヨン寺院外回廊には2か所所の入口がありますが、当初シンハ彫像はこのうち18か所の入口両脇に合計36体あったと考えられています。しかし現在確認できるものは28体のみであり、また現存していても、長い年月の中でこれらの彫像は崩落、あるいは壊れて彫像の一部が失われてしまっているものも多くあります。また、20世紀初頭に一度修理されている彫像もありますが、この時に使われたモルタルが脆くなって崩れそうになっていたり、鉄のピンが錆びて膨張し、彫像にヒビがはいってしまっている場合もあります。

今回は、そうした過去の修復部分を取り除いて新たにステンレスのピンで接合したり、必要な箇所には新砂岩材によって補てんを行うという作業も行われています。

また、解体前はかなり不安定な状態でシンハ彫像が設置されていたため、修理後のシンハ彫像を安定して再設置するにあたっては、基壇整備も同時に行われています。

解体した彫像の古い修復処置を取り除き、正確な劣化状況を把握したところで、JASA専門家2名と熟練作業員2名とともに、各彫像について接着方法、新材による補てんが必要な箇所、そしてどのようにシンハ彫像を再設置するかということについて検討を行いながら、作業は進められています。

修復前後の様子は一見写真ではわかりにくいですが、各段に安定し、生まれ変わったシンハ彫像をぜひご覧ください!

修復前

修復後

<バイヨンのシンハ彫像豆知識>

シンハはサンスクリット語でライオンを意味しますが、ライオンは古今東西、権力の象徴としてしばしば登場する動物です。カンボジアでも、インドからの影響を受け、王権を象徴する動物として古くから重用され、アンコール王朝歴代の王に関わる寺院の入口やテラスなど装飾として多く登場します。

バイヨン寺院のシンハ彫像はすべて同じ大きさというわけではなく、入口により大きさや顔の向きが異なっています。大きいシンハ彫像が置かれた入口は、重要な人物のための入口であった可能性もあり、こうした彫像の作りや大きさの違いが、数ある寺院入口の使用頻度やヒエラルキーを表していたのかもしれません。かつては王家あるいはそれに属する人々のためであったと考えられている寺院正面の東参道の入口に置かれたシンハ彫像たちはひときわ大きく、非常に堂々とした風貌を備えています。

しかしその多くが劣化、あるいは崩壊の危機に瀕しており、早急な修復が必要とされています。これらの彫像がプロジェクトメンバーの手で生まれ変わり、再び寺院を訪れる現代の人々を荘厳に迎えてくれる日を心待ちにしています。

※本事業は日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JASA)の技術協力のもと、日本ユネスコ協会連盟との共同事業としてすすめられています

(麻)

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