JSTが運営するバイヨン中学校では、カンボジア国内外の専門家をお招きしての特別授業を行っています。
今日は、カンボジア政府内閣官房大臣特別補佐官であり、プレア・ヴィヘア遺跡地域保全機構議長のキム・セッダラー氏(カンボジア人)による特別授業が行われました。
現在40代のセッダラー氏は、カンボジアの文化に興味を持っていたことから、内戦直後の80年代に、考古学を学ぶために王立プノンペン芸術大学に入学しました。
その後、フルブライト奨学金を得てアメリカへ留学し、考古学と政治学の博士号を取得。
カンボジア帰国後は、内閣官房大臣特別補佐官に、また昨年からは、2008年に世界遺産に登録されたプレア・ヴィヘア遺跡地域保全整備機構の議長職にも就いています。
そんな華々しい経歴の持ち主のセッダラー氏ですが、カンボジアで学んでいた70年代、80年代は国全体が貧しく、ノートさえなかった時代を過ごしたそうです。
何も書かれていない紙を見つけては、英語の単語を書いて覚えていた・・・・、そんなエピソードから授業は始まりました。
小さい頃から文化に興味を持っていた自分が、現在は、世界遺産に登録されているプレア・ヴィヘア遺跡の最高責任者になり、世界的遺産を守り伝える仕事に就いている・・・、
みんなも目標を持って毎日努力を積み重ねれば、運も開き、きっと夢は実現する!!
そんな力強い人生の大先輩の言葉を直に聞くことができたバイヨン中学校3年生の生徒たちは、なんて幸せなのでしょう。。。
生徒たちは、身を乗り出して、セッダラーさんの話を聞いていました。
もちろん、プレア・ヴィヘア寺院を建立し、増改築を行った歴代の王たちの歴史から、
世界遺産登録後の隣国・タイとの紛争の歴史まで、寺院の歴史についても詳しい説明がなされました。
特に興味深かったのは、寺院周辺に居住している少数民族・クイ族についてです。
プレア・ヴィヘア寺院周辺では、鉄をはじめとする金属が産出されるため、クイ族は昔から鉄の精錬技術に秀でていました。そして、武器や農具等を製造することで、各時代の王朝とも密接な関係をもっていたといいます。
さらにクイ族は、象狩りと象の訓練に関する特別な技術も有していて、アンコール王朝の戦闘用象部隊にも象を提供していたそうです。
クイ族は、現在も独自の言葉で話しているそうですが、ただし、文字はないため、こうした少数民族の文化保存にも、プレア・ヴィヘア遺跡地域保全整備機構の議長として、力を入れていく必要性を強調されていました。
国の文化を知り、それを守っていく大切さ、自分の人生を切り開いていくその可能性と心構え・・・・。
目の前に「未来」という大海原が開けている中学生の生徒たちにとって、本当に多くのことを学んだ1日でした。
セッダラーさん、貴重なお話をありがとうございました!
(陽)
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